| 田岡総研文書ファイル |
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| 乱世の人生訓2「窮寇には迫ることなかれ」 |
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孫子、九変(きゅうへん)編の一節に「囲師(いし)には必ず闕(か)き、窮寇(きゅうこう)には迫ることなかれ」とある。 敵を取り囲む陣営には、必ず隙間(逃げ道)を作り、敵兵を絶望的な窮地に追い込んではならないという意味である。 私はこの概念を前職(コンピュータ会社)の先輩に聞いた。当時20才代の私には意味が判らなかった。 取引先の工場で、くる日もくる日もシステム開発に追われていたころの話しである。応援に来てくれた2期先輩と議論となったが、私のほうが正論で、相手に反論を許さなかった。もう、3ヶ月も取引先に常駐していた私には心に余裕のかけらも無く、先輩に訴えたい事が沢山あったのである。その時に先輩が教えてくれたのが、この言葉である。 私は大学時代、雄弁部という壇上弁論のサークルに所属しており、ディベートの心得も多少あった。学生時代は論客として知られた。 しかし先輩は「相手を追い詰めてはならない」という。 「なぜ、追い詰めてはならないのか」と聞くと、先輩は「勝つためには追い詰めてはならない」と確か答えた。 意味が判ったのはずっと後のことである。 孫子はもちろん兵法書なので、勝つための戦略を説いているのである。しかも、相手に逃げ道を与えよ、というのである。追い詰めて一網打尽にした方が勝つのではないかと、誰でも思うのである。 一方、「背水の陣」という言葉も出典は孫子である。自軍の後方にある橋を焼き捨てて、逃げ場の無い状態にし、敵軍にはわざわざ逃げ道を作っておく事が勝つ秘訣なのである。 「窮鼠猫を噛む」ということわざ通り、追い詰められたネズミは猫でも噛みに出るのである。ところが、逃げ道があれば自分だけでも助かろうと思い、パニック状態の中、敵軍は崩れながら逃げるのである。逃げた敵は追わないのである。 孫子を読む限り、戦はできるだけ行わないで戦わずに勝つ事が上策のようである。 「菜根譚(さいこんたん)」にも「悪党や強欲な連中をやっつけるには、1筋の逃げ道を用意してやれ。でないと奴らは苦し紛れに何をするか判らない」(前集・140)とある。 それにしても、前述の先輩、私に議論で追い詰められながらも、孫子を持ち出して私をたしなめるとは、なかなかの人物であった。その人は今、部長になっている。 ***** 著作権表示:株式会社田岡総合研究所 田岡將好 ***** この文章をコピーしたり、配布したり、社員研修等で使っても多いに結構ですが、 著作権表示を消さずにお使い下さるようお願いします。(http://www.taoka-s.com) |