田岡総研文書ファイル

デフレスパイラルと懸念
 デフレは確実に進んでいる。政府関係者は「デフレ・スパイラルに陥らないように」との表現を今でも使っているが、とっくにデフレ・スパイラルは始まっている。
 デフレとは、物価が恒常的に下がって行く経済現象であり、スパイラルとは「つるまきバネ」の事である。朝顔のつるの様にらせん状に巻いたバネ、いわゆる、普通のバネである。
 デフレが次のデフレに影響を及ぼし、次々に連鎖して循環しながら進行する事をバネの形になぞらえて言うのである。
 今回は「資産デフレ」から始まった。1991年頃を頂点にバブル経済が崩壊し、地価が下がった。日本の金融は土地を担保に金を貸す事がほとんどなので、土地の価格が下落すると、銀行などの貸し手は目減り分の追加担保を求めるか、返済を迫る事となる。借金を返せずに破綻した企業の土地を処分する(売る)と、さらに土地の値が下がる。バブル期に1億円した土地が、今や2000万円の価値しかない、といった現象が都心部ではよく見られる。
 地価の下落によって、金融機関が新たな貸出しをしなくなると、財務体質の弱い企業は倒れ、資金の潤沢な大手がこれを買収し、安くなった土地を利用して躍進する。
   買収による企業規模拡大と経営の合理化により、より安く商品やサービスを提供し、市場での優位性を発揮する。
 おりからの、アジア諸国の経済発展により、輸入品の価格が下落すると、自ら海外に乗り出し、工場を作ったり海外から材料を調達して安く提供する。
 どこかの企業が商品を安く提供すると、他も争って安くする。安いことが当たり前となり、よほどいいものでなければ高いものは売れなくなる。商品を安く提供する為に、どんどん規模を拡大し、どんどん海外での調達を進め、国内の取引も価格の引き下げを求め合う。
 このようにして値下げがあらたな値下げを生むという第2段階目のデフレスパイラル、「物価全体のデフレ」が進行する。
 経営の合理化は失業者を増大させ、コスト削減の為に賃金を減らす。現在は第3のデフレスパイラル、「人のデフレ」が進行中である。商品のみならず、人材派遣などのサービスも値下げ競争に突入した。
 今年の人事院勧告は、開設以来はじめて、国家公務員の月給を下げる内容であった。賃金デフレもスパイラル状に進行しているのである。
 人のデフレは賃金のみならず、人そのものの安売り、人格や価値観、道徳心の低下などを招く恐れがある。これだけはスパイラル状に進行しないように、1人1人が気をつけなければならない。

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